みなさんは「里親制度」についてどれくらい知っていますか?
「里親」という言葉は聞いたことがあるけど、どこか縁遠い話だと感じている方も多いのではないでしょうか。
子どもが成長していく過程においては、特定の信頼できる大人との間での愛着形成、そして家庭での暮らしや経験がとても重要です。
現在日本には、さまざまな事情で自分の生まれた家庭で家族と暮らすことのできない、社会的な養護を必要としている子どもが4万2千人いるといわれています。
このような子どもたちを自分の家庭に迎え入れ、温かい愛情と正しい理解で子どもの育ちをサポートしてくれるのが「里親」です。
福岡県里親支援機関リンクは、しこふむ地域を含む11ヶ所で活動されています。(※宗像児童相談所と連携して活動しています。)
「児童福祉法」にもとづいて設置されている自治体(都道府県)の機関です。児童相談所は、子どもの権利を守り、子ども本人やその家庭に対して援助をおこないます。
家庭・両親からの相談受付、家庭への支援、虐待等からの子どもの保護、家庭への指導等、さまざまな「子どものサポート」についての役割を担っています。
福岡県域においては、自治体ごとに福岡児童相談所・宗像児童相談所・久留米児童相談所・大牟田児童相談所・田川児童相談所・京築児童相談所の6つの児童相談所があります。
今回のインタビューでは、統括責任者である菅原さんと、広報を担当されている上野さんに、あまり知られていない里親制度の種類や、里親の役割、里親制度の広報・啓発活動についてお話を伺いました。
里親支援機関リンクの活動内容
松見:まずは里親支援機関リンクがどのような活動をしているのか教えてください。
菅原さん:里親支援機関 リンクは、令和3年に福岡県より事業を受託し、岡垣町にある児童養護施設「報恩母の家」の中に開設されました。
広報担当の他、ソーシャルワーカーや心理士、ピアサポーターとして活動する里親の当事者を含む6名の職員で活動しています。
活動内容は地域における里親制度の広報・啓発活動と、里親になりたい方への説明会や研修の実施、子どもと里親のマッチング、子どもが委託された後も家庭訪問等をおこない里親さんや子どもさんの話を聞かせてもらっています。
里親さんと共に子どもの育ちを見守り・共に悩み考え・共にその成長に喜びを感じること、そして何より子どもたちが見せる表情や力に教わることこそが、私たちのやりがいに繋がっています。
活動においては支援する側とされる側ではなく、里親になりたい方や里親として活動している方の伴走者でありたいと考えています。
松見:「リンク」の名前の由来は何かあるのでしょうか?
菅原さん:リンク(LINK)という名前には、すべての子どもたちが社会の中で安心安全に過ごせるよう願いをこめています。
Love 愛情をもって子どもに寄り添うこと
Identity 子どもが自分らしくいられること
Native 生まれたままのその子を受け止めること
Key そんな出会いのきっかけをつくっていきたい
このような想いを里親さんや里親になりたい方と共有していきたいと考えて名付けました。
里親の種類について
菅原さん:松見さん、里親にはいくつか種類があるというのをご存知でしょうか?
松見:すみません、全くわからないです…。教えていただけますか?
菅原さん:そうですよね。里親には次の4種類があります。
【養育里親】
事情により生まれた家庭で暮らせない子どもを、法的な親子関係は結ばずに一定期間自分の家庭で養育する里親
【専門里親】
養育里親の中でも、虐待された子どもや障害のある子どもを受け入れるための専門的な知識を持つ里親
【養子縁組里親】
法的な親子関係を結び、子どもの養親となることを希望する里親
【親族里親】
実親が死亡や行方不明等により養育できない場合に、三親等以内の親族が子どもを養育する里親
この中でも私たちは「養育里親」を中心にサポートさせていただいています。
松見:養育里親についてもう少し詳しく教えてください。
菅原さん:私たちが広報活動をする中で、「里親」というと戸籍のうえでも親子関係となる「養子縁組里親」を思い浮かべる方が多くいらっしゃいます。「養育里親」は、親子関係を結ばずに一定期間、自分の家庭に受け入れて子どもを養育する里親のことです。
「一定期間」というのは、子どもや家庭の状況によって様々ですが、数日から数年、時には18歳までという長期委託もあります。
養育里親には、国や県の規定に基づいて、子どもの養育費(里親手当・生活費・学校教育費・医療費など)が支給されます。
里親制度を地域の中に
松見:里親制度を認知してもらうために、どんな活動をされているのですか?
上野さん:私はリンクの中でも広報・啓発活動を担当していて、里親制度を地域の人に知ってもらえるように、イベントや制度説明・相談ができる機会を企画・実施しています。
活動する中でSNSで発信したり、行政や地域の方との繋がりから、興味をもって足を運んでいただいたり、お問合せをいただいたりすることも多くなってきました。
制度を知る方が増えることで、里親さんや里親さんのもとで生活する子どもたちを地域全体であたたかく迎え入れてくれるような社会になるといいなと思っています。
そのために今、里親制度そのものを広める活動を重視して取り組んでいます。
里親になるまでの流れ
松見:里親になるためにはどのようなことをすればいいのでしょうか?
菅原さん:里親になるために特別な資格等はありません。国が定める要件には次のようなことが挙げられています。
- 子どもの養育についての理解と熱意があり児童に対する豊かな愛情を有していること
- 経済的に困窮していないこと
- 里親本人またはその同居人が欠格事由に該当していないこと
- 法律に定められた研修(リンクで実施しています)を受講していること、、、など
まずは我々のような里親支援機関や児童相談所にお問合せいただき、制度説明や里親登録までの流れをお伝えし、資料等を送付します。
里親登録に向けてのご意向をうかがい、面談させていただきます。
その時にご家族の状況や里親になるにあたっての想いなど、ヒアリングさせていただきます。
その後、リンクの研修を受講。子どもが安心安全に生活できるよう養育者としての在り方について理解を深めていきます。
研修後、2日間の実習をおこないます。実際に社会的養護のもとで生活する子どもたちと関わる中で、座学の研修では得られなかった発見もあり、より具体的なイメージを持って「里親」としての在り方に向き合います。
すべての研修と実習が終了したら、児童相談所の職員とリンクの職員が家庭訪問をいたします。里親登録に向けて、ご家族の意向を再確認しながら話し合っていきます。
これまでの情報をもとに「児童福祉専門分科会」において共有され、里親登録が可能かどうかの審議がおこなわれます。その後、里親として福岡県に登録されるという流れです。
状況は様々ですが、里親としての希望をいただいてから登録までに数ヶ月から半年ほどの時間がかかります。
また冒頭でもお伝えしましたように、リンクは児童養護施設「報恩母の家」の中にある事業所です。施設は、長い歴史や専門性から社会的な支援を必要とする子どもたちのために培ってきたノウハウがあり、地域の子育て支援の一端も担っています。施設とリンクは、子どもへの理解や関わり方、公的養育の養育者としての在り方など、里親養育に活かせるスキルを研修やフォローアップに取り入れられるようチームとして連携しています。施設は、私たち支援機関にとっても大きなバックアップとなっています。
松見:現在、里親として活躍されているのはどのような方達でしょうか?
菅原さん:本当にさまざまな方が里親として登録されています。
ご自身のお子様を育てながら里親として子どもを受け入れている方や、子育ての経験がない方もしっかりと研修等で知識やスキルを備え子どもを迎えている方もいらっしゃいます。
最近では、ご自身で情報収集してご連絡される方や、テレビのニュースなどをみて「自分に何かできることはないでしょうか?」とお問い合わせいただくことも多くなりました。
里親の存在意義
松見:里親制度がもっと広まっていくといいですね。
菅原さん:そうですね。子どもにとって「里親」は、特定の信頼できる大人との間で愛着関係が育まれることで子どもが安心して生活ができること、家庭生活における多様な経験やスキルが得られ子どもが将来自立に向けてのイメージができることなどが期待されています。
里親養育は、公的養育ですので児童相談所や里親支援機関、乳児院や児童養護施設などの様々な専門職員がチームとなって「協働」します。
私たちリンクは、子どもの最善の利益のために、里親さんや子どもが困ったとき気軽に相談できるパートナーでありたいと思っています。
松見:最後にこの記事を読んでくださっている方にメッセージをお願いします。
上野さん:里親制度や「里親」に少しでも興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひ、一度お問合せいただけると嬉しいです。
福岡県里親支援機関リンク 問い合わせ
〒811-4231
福岡県遠賀郡岡垣町海老津3丁目8-1
児童養護施設 報恩母の家 内
TEL:093-282-0001(母の家)080-1409-2394(リンク携帯電話)
FAX:093-282-0016
MAIL:link@sound.ocn.ne.jp
対象エリア
宗像児童相談所管轄の地域11ヶ所中間市・宗像市・福津市・芦屋町・水巻町・岡垣町・遠賀町・古賀市・宮若市・糟屋郡新宮町・鞍手郡鞍手町
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